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2024.05.02

2024.05.02

親の家を売る方法とは?相続前後での売却のポイントと使用できる特例を解説

親の入院や介護、相続などをきっかけに家の売却を検討している方がいることでしょう。親の家を売却する際、売るタイミングが重要です。タイミングによって、手続きのやり方や発生する税金の金額が異なります。本記事では、親の家を売る際の方法について解説!さらに相続前と後の売却ポイントや使用できる特例について解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

 

親の家を売却する際に事前に覚えるべき基礎知識と方法

出典:pixta.jp 

 

親が介護施設に入居したり、亡くなったり、介護を受けたりと意思疎通が図れない場合は自分名義では売却できないことです。持ち家は親の名義となるため、代理人として手続きを進める必要があります。

 

代理人としての家の売却はケースによって変わってくるので、自分がどの事例に該当するのか事前に把握し理解することが重要!代理で家を売却する際の代表的な方法は、下記の3つです。

 

・相続した家の名義変更をしてからの売却【親が亡くなった場合】

・委任状を使った売却【親に売却の意志はあるが手続きが困難】

・成年後見人制度を活用した売却【病気で意思疎通すら困難】

 

相続した家の名義変更をしてからの売却【親が亡くなった場合】

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親が亡くなった後に不動産を売却する場合は、相続登記の変更手続きをしなければなりません。相続登記とは、対象の不動産がどのようなもので誰が所有しているのかを記録している台帳のことで、登記簿とも呼ばれています。

 

相続登記はもともと任意であったが、2024年4月1日からは年以内の相続登記が義務化されました。そのため親が亡くなった後に家を売却する際は、速やかに登録登記の変更手続きを行う必要があります。

 

相続登記の手続きの流れは、以下の通りです。ぜひ、手続きの参考にしてみてください。

 

【相続登記の流れ】

  1. 遺言書の確認:故人の遺言書の有無と相続内容の確認
  2. 相続人の確認:戸籍謄本の取得と血縁関係の調査、法律上の相続人の確認)
  3. 相続財産の把握:不動産や通帳、株式、車、保険などの資産と借金やローンなどの負債
  4. 相続放棄か承認の決定:相続の放棄か限定承認かを選択※限定承認をする場合の期限は3ヶ月
  5. 遺産分割協議:遺言書がない場合、相続人による遺産分割の話し合い実施
  6. 相続登記:相続登記の手続きをし不動産の名義を変更

 

【相続登記に必要な書類】

・登記申請書

・印鑑証明

・住民票の写し

・戸籍謄本

・遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合)

・遺言書(遺言があった場合)

 

相続人が1人の場合は自力で手続きを進めることは可能ですが、兄弟や姪・甥など複数人の場合は複雑化する可能性があります。人数が多いと集めなければならない書類も膨大となるので、相続登記の手続きが難航するかもしれません。

 

もし手続きが難航した場合は、相続登記に詳しい司法書士に依頼するのがおすすめです。

 

※“法務省 公式HP”参照

 

相続登記に関する詳細を見てみる

 

委任状を使った売却【親に売却の意志はあるが手続きが困難の場合】

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親に売却の意志はあるものの家の売却手続きが困難な場合は、親の代理人として売却を進めていきます。このようなケースの場合は、家の売却権限を移す「委任状」を使った方法が代表的です。委任状を申請し受理されれば、所有者となる親と同等の法的効力を持てます。

 

委任状に書く内容は、以下の通りです。よりスムーズに作成したい場合はひな形やテンプレートを活用してみるとよいでしょう。

 

・売却する不動産の表示項目(登記事項証明書の表記に従う)

・不動産の売却条件(売買金額)

・不動産の手付金の金額

・不動産の引き渡し日

・不動産の残代金支払日・支払い口座

・売買契約の解除期限と解約金

・固定資産税の負担割合

・所有権移転登記を日付

・委任日

・委任状の有効期限

・委任の範囲

・所有者本人と代理人の氏名・捺印※実印を用いる

・所有者と代理人の氏名と捺印※実印を用いる

 

委任状のテンプレートを使ってみる(TBS不動産売却センターHP参照)

 

成年後見人制度を活用した売却【病気で意思疎通すら困難】

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認知症や重篤な病気などで売却の意思疎通すら困難な場合は、成年後見人制度を活用した売却となります。成年後見人制度とは、知的障害、精神障害、認知障害などを理由に判断能力が難しい場合に適応できる制度で、物件所有者本人が不利益が被らないよう、家庭裁判所の判断で後見人が選定され売却手続きが進められます。

 

成年後見人制度を利用する際に注意しなければならないことは、後見人が必ずしも子どもとは限らないことです。家庭裁判所の判断によっては弁護士や司法書士、社会福祉士などが第三者として選ばれる可能性があるので、事前に念頭に置きましょう。

 

また、成年後見人制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、状況によっては手続きで苦戦する可能性があります。もし手続きで苦戦する場合は、弁護士や司法書士などの専門家にサポートを依頼するのが望ましいでしょう。

 

  1. 書類準備(申立書類一式、戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書、医師の診断書など)
  2. 裁判所への面接予約
  3. 必要な書類を提出し申立て
  4. 裁判所職員による面接
  5. 審査(精神鑑定や調査官による調査、親族の紹介など)
  6. 審判(成年後見人の選任と決定)
  7. 後見登記
  8. 職務説明会※親族が後見した場合に開催

 

成年後見人制度を使った手続きの詳細

 

親の家を売る際は相続前と後で税金は変わる?

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親の家を売る際、相続前と後で税金が変わるのかどうか気になるところでしょう。「人によってはどちらのタイミングでも大丈夫なのでは?」と考える方もいますが、タイミングによってかかる税金などが異なります。

 

もし、よく知らずに親の家を売ってしまうと、気づかないうちに損をしてしまうかもしれません。

 

家の売却では所得税と相続税が発生する

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親の家を売る際に覚えなければならないのが、所得税と相続税の存在です。所得税とは持ち家を売却した場合の利益に対して生じる税金のこと。例えば購入金額3,000万円の持ち家を6,000万円で売却した場合、利益は3,000万円となります。利益のうち20%が所得税の対象となり600万円の税金を支払うイメージです。

 

一方相続税とは、相続し現金化された資産に対してかかる税金のこと。先ほどの事例を挙げると、6,000万円の売却金額に対して税金がかかるイメージです。

 

具体的な税金の算出方法や控除については、この後のケースに則って説明します。

 

相続前に親の家を売った場合

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相続前に親の家を売るメリットは、万が一親が亡くなった場合の後に備えて家をどのように売るべきなのか話し合いできるところです。相続後に親の家を売るとなると、遺書がない限りは手続きで苦戦するかもしれません。

さらに3,000万円の特別控除が受けられたり、現金化することで相続トラブルを防止したりといったメリットもあります。

しかし不動産が高く売れた分相続税が高くなりやすくなるので、金額によって大きな負担となるかもしれません。

 

売却してから相続した場合にかかる譲渡所得税

 

相続前に親の家を売却した場合は、譲渡所得税が発生します。譲渡所得税とは売却に対する税金のことで以下の計算で算出可能です。先ほどの事例を当てはめると、下記の通りになります。

 

【譲渡所得の求め方】

・課税譲渡所得金額 = 収入金額-(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

・3,000万円=6,000万円-3,000万円-特別控除額

 

もし仮に購入金額が分からない場合は、「概算取得費=土地または家の売却価格×5%」の計算式で求めてみてください。

 

譲渡所得税は期間によって税率が変わる

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譲渡所得を求めた後は、譲渡所得税を算出しましょう。譲渡所得税は不動産の所有期間によって税率が変わるため、算出する際は注意が必要です。所有期間が5年未満の場合の所得税率は約40%、5年以上の場合は約20%となっているので覚えてください。

 

【譲渡所得税の求め方】

・譲渡所得税額=譲渡所得×税率

・600万円=3,000万円×税率20%(所有期間が5年以上の場合)

 

売却してから相続した場合にかかる相続税

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親の家を売却してから相続した場合、現金化された資産に対して相続税がかかります。先ほどの事例を挙げると、6,000万円の売却金額に対して相続税がかかるイメージです。

しかし、相続税の場合は金額の範囲内であれば基礎控除を受けることが可能。基礎控除額を入れた場合は、下記の計算式になります。

 

【売却してから相続した場合の計算】

・課税対象=相続財産-基礎控除

・2,400万円=6,000万円-3,600万円(相続人が1人だけの場合)

 

【基礎控除の求め方】

・3,000万円+ (600万円×法的相続人の数)

 

※法定相続人:遺産を相続できる権利のある人

 

課税対象に対する税率の計算方法

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課税対象の金額を算出した後は、税率を入れた計算をします。税率は法定相続分に応ずる取得金額によって変わるので注意が必要です。つまり、算出した課税対象の金額がどの税率の項目に当てはまるのか把握します。

 

今回の事例を挙げると、課税対象の金額は2,400万円となっているので3,000万円以下の項目に該当。税率は15%かかり、既定の範囲の50万円を引くと310万円となります。今回の事例の場合は、以下の通りの計算式です。

 

【相続税の求め方】

・相続税=課税対象×税率-控除額

・310万円=2,400万円×15%-50万円

 

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

 

相続後に親の家を売却した場合

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相続後に親の家を売却した場合は、相続税を圧縮したり、特例を受けられたりとさまざまなメリットがあります。しかし不公平な財産分割が起こったり、家族や親戚同士で相続トラブルが起こったりといったこともあり事前にリスクを知ることが重要です。

 

土地の評価額に対して相続税がかかる

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実家を不動産のまま相続した場合は、土地の評価額に対して相続税がかかります。例えば6,000万円の持ち家を売って、仮に評価額が4,000万円だったとしましょう。この場合、評価額4,000万円に対して相続税がかかります。

 

計算式に当てはめると、下記の通りです。

 

【相続税の求め方】

・課税対象の金額=評価額-基礎控除

・400万円=4,000万円-3,600万円

 

課税対象に対する税率の計算

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先ほど紹介した方法と同様に、課税対象の金額を算出した後は、税率を入れた計算をします。今回の場合は課税対象の金額は400万円となっているので、税率10%が対象です。税率10%の場合は控除額がないため、計算式はシンプルな形となります。

 

【相続税の求め方】

・相続税=課税対象×税率-控除額

・40万円=400万円×10%-なし

 

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

 

所得税の求め方

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6,000万円の物件を売った場合、購入金額は3,000万円、相続税が40万円だったとしましょう。その場合、獲得した利益は2,960万円。さらに利益に対して税率20%の利益がかかるため、譲渡所得税額は590万円となります。

 

売却してから相続した場合は相続税は取得費のうちに入れられるので、忘れず計算してみてください。

 

【譲渡所得の求め方】

・課税譲渡所得金額 = 収入金額-(取得費(相続税) + 譲渡費用)- 特別控除額

・2,960万円=6,000万円-(40万円+3,000万円)-特別控除額

【譲渡所得税の求め方】

・譲渡所得税額=譲渡所得×税率

・590万円=2,960万円×税率20%(所有期間が5年以上の場合)

 

親の家を売った場合に受けられる特別控除

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親の家を売った場合は、状況によって特別控除が受けられます。特別控除が受けられると所得税や相続税など支払う税金の負担が軽減されやすくなるので、該当の条件に当てはまる場合は活用するのがおすすめです。

 

自分が住んでいる家の場合は3,000万円の特例が受けられる

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もし自分が住んでいる家を売却した場合は、3,000万円の特例が受けられます。先ほどの6,000万円の家を売った場合の事例に特別控除額を入れると、下記の通りです。控除を受けることにより、収入金額によっては所得税がかからずに済みます。

 

・課税譲渡所得金額 = 収入金額-(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

・0円=6,000万円-3,000万円-3,000万円

 

【特例の対象となる物件】

・昭和56年5月31日以前に建設された建物

・区分所有建物登記がされていない建物

・相続開始前に、被相続人以外居住していなかったこと

 

【特例の適用要件】

・相続又は遺贈により物件を取得した人が売り主であること

・相続から譲渡の時まで事業や貸付、居住用に使用していないこと

・譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること

・取り壊して売却する場合、相続から取り壊し、売却までの間事業や貸付、居住用に使用していないこと

・取り壊しから譲渡の時まで建物や構築物の敷地に使用していないこと

・相続開始から3年後の年の12月31日までに売却すること

・売却代金が1億円以下であること

・相続財産を譲渡した場合の取得費特例など、ほかの特別控除を使用していないこと

・同じ人から相続又は遺贈された別の家や敷地にこの特例を使用していないこと

・親子や夫婦など特別な関係がある人に売っていないこと

 

【申請に必要な書類】

・確定申告書

・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

・売る家の登記事項証明書などで、相続した家なのかや建てられた日付がわかるもの

・家がある地域の自治体で発行する被相続人居住用家屋等確認書

 

※“国税庁 公式HP”参照

 

国税庁 公式HPで詳細を見る

 

小規模宅地等の特例

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実家を相続する場合、小規模宅地等の特例を活用することによって相続税が安く済む可能性があります。例えば亡くなった人が自宅として使っていた土地を配偶者や同居親族などが相続した場合は、土地の評価額を8割引きにすることが可能です。

 

相続税が80%オフになるのは、節税対策をしたい方には嬉しい特例でしょう。ただし、持ち家を持っている場合は特例は使えないので注意してください。

 

国税庁 公式HPで詳細を見る

 

親の家を売る際の注意点

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親の家を売る際は、いくつか注意しなければならないポイントがあります。誤った方法で家の売却をしてしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。場合によっては、家が売却できない可能性もあります。

 

家の売却にかかる税金を把握する

家の売却には所得税や相続税のほかにも、住民税や印紙税、登録免許税などさまざまな税金が発生します。家の売却にかかる税金の詳細を調べておかないと、思った以上の支払金額で困惑してしまうかもしれません。

このような問題が起こらないためにも、税金の内訳をチェックしましょう。

 

物件の状態を把握する

親の家に限らず物件を売却する際は、事前に建物に不具合がないか確認することが必要です。売却した家で破損や不具合などが見つかった場合は買主から瑕疵担保責任を問われる可能性があります。場合によっては損害賠償や訴訟を受けてしまうかもしれません。

このようなトラブルに巻き込まれないためにも、事前に家の状態をチェックしましょう。もし自力でチェックするのが難しい場合は、住宅診断を受けるのがおすすめです。

 

確定申告をする

不動産売却で利益が出た場合は、確定申告をしなければなりません。自営業で働いている方であれば馴染みがありますが、会社員の場合は触れる機会がないため人によっては申告のし忘れをしてしまうかもしれません。

確定申告を忘れてしまうと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税などさらなる税納付を求められる可能性があり注意が必要です。

確定申告の詳細については国税庁の公式HPに掲載されているので、ぜひチェックしてみてください。

 

国税庁の公式HPで詳細を見る

 

親の家の売却で苦戦した場合は専門家に依頼するのがおすすめ

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もし親の家の売却で苦戦した場合は、司法書士や弁護士、不動産会社など専門家に依頼するのがおすすめです。親の家の売却はケースによって手続きや税金、必要な書類、使用できる特例などが異なります。今回紹介したのはあくまでも一例であるので、人によっては参考にしにくいかもしれません。

ほとんどの方の場合は、家の売却方法について不慣れなところもあるので、専門家に依頼し的確な手続きができるようにしましょう。

 

適切な方法で親の家を売却しよう

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本記事では、親の家を売る際の方法について解説しました。人によっては税金の計算方法や活用できる特例、必要な書類などが異なります。より的確に親の家を売却するためには、専門家に相談するのがおすすめです。本記事を参考に、家の売却手続きを進めてみてください。

この記事を書いた人

ARUHI 住み替えコンシェルジュ
編集部

住み替えのプロ、ARUHI 住み替えコンシェルジュがわかりやすくご説明し、一人ひとりに寄り添った、安心できる住み替えを徹底サポートします。

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